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電車は誰も乗っておらず閑散としていたが、私たちが乗り込んだとたんに賑やかになった。山田さん夫妻の話は止まらずに、笑いが絶えなかった。
家まで一番遠い私は、一人また一人と降りていく姿を見送ってみなが降りた頃、一人ぽつんと座っていた。
外を眺めても、外灯も何もない。真っ暗な窓ガラスには私の姿だけが映っている。その姿は、疲れているけれど生き生きと映った。
そして電車は田圃を抜けて、街に近づいていく。窓には外灯の明かりが点々と現れ、それに伴って車内の人も増えていく。それを眺めて電車に揺られていると、だんだんと眠気が襲ってきた。
寝ちゃダメだ、乗り過ごしてしまうと思いながら瞼を擦ったが、眠気には勝てない。眠りは私を無意識の世界へと誘う。
こくりこくりと舟をこぎ始めると、ポケットのスマホが震動した。寝ぼけ眼でスマホを見ると、和哉くんからの通知だった。
「こんばんは。和哉です。」
こんばんはと返信すると、すぐに通知が来た。「もう家につきましたか?」と聞かれ、電車でうとうとしていると送ると、「寝過ごしますよ、俺でよければ話し相手になります。」と来て、そこから会話が始まった。
私は眠気と戦いながら、彼と話し続けた。普段の姿からは想像もつかないほど、面白いスタンプやかわいいスタンプが送られ、自然と笑ってしまう。
眠気はすっかり飛び、そして気づけば、電車は駅に到着した。
「もう駅についたよ。」と送ると、「あとは徒歩ですか?」と聞かれてそうだと答えると、「気をつけてください」と気遣ってくれた。
「おやすみなさい」と互いに送って、私はスマホをしまった。
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