1人が本棚に入れています
本棚に追加
99
「レオナ、君なのか?」
黒いダッフルコートの男が歩み寄ってきた。年の頃は十代後半だろうか。少女と同じように、首から古いカメラを提げている。
「まあ、もしかして弥彦様でいらっしゃいますの? まさか再びお目にかかれるとは……嬉しゅうございますわ」
少女も男の方に向き直る。
「僕もだよ。最後に会ったのは五十年以上前になるかな。相変わらず綺麗だね」
「あら、お上手ですこと。弥彦様もお変わりないようで何よりですわ。……それにしても、あれから世界は随分変わってしまいましたわね」
「まったくだよ。カメラと電話が一つになって、あのような薄い板に収められるとは思いもよらなかった。それでも、未だに昔ながらのカメラを好む人間もいるからね」
「ええ。時代が変わっても、変わらない人の心もあるということですわね。この子たちのように」
「そうだね。おっと、こちらの青年はお嬢さんに気があるようだね」
「お嬢さんもまんざらではなさそうですわ。同じようなカメラを持つ者同士、惹かれあうものがあるのでしょう」
「彼らが結ばれれば、僕たちもまた一緒に過ごせる日が来るかもしれないね」
「そうなれば素敵ですわね」
最初のコメントを投稿しよう!