諦めるの?

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諦めるの?

そんな毎日がつづいて 私は自分の事だけ考えていたんじゃないかと 思うようになりました 小さい頃に両親と死別して苦労して大人になり 頑張って弟を東大まで出して薬学博士になった 二人兄弟の兄が父です 人一倍苦労を経験しているから そういう人になった経緯があります やはり両親が喜んでくれる結婚をすることが 親孝行だと思い始めました 諦めよう 諦めよう 諦めよう 何回も考えて 諦めようと思いました 中田さんに伝えないと 中田さんに あれから2度目の訪問は雰囲気がよくないからと 止めていました そして、決めて 中田さんに手紙を書いて渡すことに 会って話さないと申し訳ないと思い約束して 車で箱根方面に走りました 中田さんは何となく変だと察知しているようでした 色々いつものように話しながらいても何か変だっんでしょう 「もしかして、僕に話があるんじゃないの?」 車を止めて、手紙を読んでもらいました 顔色一つ変えずにずっと黙ったまま どのくらい時間が過ぎたか あたりは真っ暗になり 「ぼくにもう、チャンスをくれないの? 何回もお願いに行くって言ったよね」 「でも・・・ どうにもなりそうじゃないの 父の身体も心配だし・・」 中田さんは怖い顔をして、ずっと黙っていました さらに時間が過ぎて 「わかった もう、遅いから帰ろう」 ずっと黙ったままだった 数日して 中田さんから手紙が届きました 端正な字でぎっしりと書かれていました 「ここ数日、自分が自分じゃなかった気がする ヒロの事を苦しめてきただけだったのかと思って 諦めたくない気持ちしかないけどヒロが苦しむのは尚更、苦しいよ お父さんも目が好きだった お父さんとこういう関係じゃなくて上司と部下だったらすごく仲良くなれた気がしたよ ヒロの親を大事にするところも好きだよ これからも親を大事にして 本当に大事に思っていました 今までありがとう」 と、書いてありました 私の人生の中で果敢に父親に会いに来てくれた人は中田さんだけだった 時間がいくら過ぎても中田さんは 私の人生の中で一番特別な男性です 一番なにか柔らかい私の中心にそのカケラは まだ暖かいものとしてあるように思います
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