プロローグ

2/3
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
明治維新で西洋文化がどっと流れ込み 江戸は東京という名前に生まれ変わった 駅が作られ鉄道が敷かれ 徒歩や馬での移動から列車移動に劇的に様変わりした それからしばらくあと大正の頃 夜汽車に歩みを進める男がいた 灰色の帽子にトレンチコート 丸メガネに口髭をたくわえた細身の紳士は ステッキと茶色のトランクを持ち改札口をくぐる 石炭と油が立ち込める駅の中を優雅に進み 目当ての列車に乗り込んだ 昼間のすし詰め状態の車内とは違い まばらに座る乗客たちが発車の時間を静かに待っていた
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!