41人が本棚に入れています
本棚に追加
/276ページ
こちらは、ポフムより若そうだ。楕円の輪郭に、小さな目とやや丸い鼻筋が配置されている。
「分かった。これからよろしくな。で、早速だけど、用件は?」
二人は、何に驚いたのか、少しだけ目を瞠った。
しかし、それについて何か言うこともなく、「恐れながら」と答える。口を開いたのは、ポフムのほうだ。
「義禁府と合同で進めている、先王殿下の薨去に関する問責の件です」
義禁府とは、王命で犯罪捜査をする部署だ。
扱う案件は、主に王族の犯罪や、反逆罪などの重犯罪である。
「殿下。申し上げにくいのですが、此度の先王殿下のご逝去、御医の医療過誤の可能性が濃厚です」
ホンウィは、眉尻を小さく跳ね上げた。だが、「どういうことだ」と訊き返すことはしない。
「……分かっている。何となく察しは付いてた」
「殿下」
「父上が臥せられた日から、まともに見舞いに行っても、取り次いで貰えなかったのが妙だとは思ってたんだ」
腕組みして、背もたれに背を預ける。
だから、あの日――父が亡くなった日の朝は、裏手からこっそり入り込んだのだ。
「それに……あの日だって顔色がよかったとはお世辞にも言えなかったけど、でも……」
あんなに急に容態が悪くなって亡くなるなんて、思ってもみなかった。もし分かっていたら、というところに思考が戻りそうになって、ホンウィは慌てて目を閉じる。
「殿下」
「悪い。報告を続けてくれ」
目を上げて促すと、「はい、殿下」と頷いたウォヌィが、携えていた書物のような冊子を差し出す。
「こちらが、この二日間の調査記録の纏めです」
受け取って開くと、ポフムが続けた。
「まず、腫れ物に対する処置が異常です。腰の上にできた腫れ物なら、患者が平民であっても当然気を付けねばなりません。ましてや、相手は国王殿下です。少しの運動にも気を遣い、キジ肉は避けるべきと、医術書にも明記されております。それを、本職の医官が、それも国王殿下の主治医たる御医が、知らなかったはずがありません」
最初のコメントを投稿しよう!