第三章 最初の忠臣

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「ああ。先王殿下の診療に当たった医官全員だ。少なくとも、ここで夜明かしするより王宮のほうが安全だからな」 「し、しかし」 「何か支障でも?」 「いえ……予定にないことですので、大臣たちが何と申しますか」  ホンウィは、やや呆れたように目を細めた。 「頭固いな……あんた、いくつだよ」 「え、は、はあ、四十五になりますが」 「じゃあ仕方ねぇな。そろそろ人生後半に差し掛かろうってトコだから、考え方ある程度凝り固まってても」  はあ、と吐息を漏らして側頭部に手を当てる。 「けど、今後も俺の治世下で働くんなら、ちったあ柔軟になって貰わないとやってけねぇぞ。何せ俺は、この夏の誕生日が来てもまだ十一だからな。祖父(じい)様の年まで生きるとしたら、これから四十年くらい国王やってるはずだから、ちょうど今のあんたの人生分より少ないくらいか。今までのやり方全部捨てろとまでは言わねぇが、まあ……そうだな。父上の埋葬済むくらいまでは、お試しのつもりで見守ってくれねぇか」  ポフムの心情は分からなかった。  ただ、彼はかすかに瞠目し、やがてユルユルと真顔になった。かと思うと、左膝を突き、立てた右膝に手を置く。左拳を地面へ立て、深々と頭を下げた。 「司憲府(サホンブ)掌令(チャンリョン)イ・ボフム、謹んで御命に従います」 「いや、だからそんな改まらなくってもいいんだけど……」  やや引き気味になりながらも、ホンウィもそれ以上は言わなかった。  瞬き一つで思考を切り替えると、「行くぞ」と彼を促す。彼も、「はい」と答えて、キビキビと立ち上がった。
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