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第一章
一
2019年3月25日――
相良孝頼は、鹿児島県伊佐市に来ていた。
大学二年の学年末休暇を謳歌する、自由気ままな一人旅。
お金も自分で貯めて、プランも自分でゼロから決めて、すべて自分の力でやっていく旅行だ。
この旅行計画、そもそものきっかけは、子供のときの暇つぶしだった。
自分の名前をネットで検索してみたら、なんと600年も前の戦国大名がヒットした。
鎌倉時代より肥後国球磨郡の人吉荘(現:熊本県人吉市)を支配してきた相良家、その10代当主が、『相良堯頼』と言ったのだ。
漢字こそ違うが、読みが完全に一致する有名人が居たとは……と思ったものの、調べれば調べるほど、相良堯頼は無名の大名だった。
ただ、この名前を付けた両親はさすがに知っていただろうと思っていた。なのに、全然知らなかったという。
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