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風の恩恵
『うわぁ、間に合わない』
少女は、バスタオルで濡れた長い黒髪を緩く拭きながら、歯ブラシを銜えてバタバタと急いでいた。
『ママは、何回も起こしました。悪しからずぅ』
5度寝をしてしまった中学3年生、御風神舞愛は、2階の階段上から、ビー玉を2つ階段の下に投げて飛び乗った。
高速回転するビー玉の回りを、マグナス効果で、風が激しく回り、御風神舞愛を受け止めると静かに階段下に下ろす。
『痛ぁ、でもこの痛いのが、身体にいいのよね』
足の裏の痛みにンッと言い、床にまだ落ちず回転してる、ビー玉を掴むとポケットに忍ばせ玄関に小走りで向かう。2階の階段から、母親がため息をついて、娘に忠告する。
『外で使ったら、ダメなのよ~』
『解ってるわよ』
後ろ手でパタンと、扉を閉めるとスカートをお尻の下に入れて自転車に股がり、ペダルに思い切り力を入れてるフリをする。
自転車は初速から、もの凄い速さで走り出す、まるで風の影響など無いように。
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