風の恩恵

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『靴下の匂い、イケテる時が有るんだけど』 『うちのミホがさあ、朝御飯ポテトチップス一袋だけ置いておいて、パパのとこに入り浸ってんの酷くない?』 『それ有りー無しーみたいな?』 『西郷隆盛って犬の呪いで石にされたんだって(笑)』 『マジウケルwダサ過ぎ(笑)西郷隆盛って誰?』 他愛ない、話で盛り上がる車内に窓ガラスから、朝陽が強く差し込み平等に照らす。 「━━━!」 電車の中で、不審な男を見つけた。 その男は、老婦人のトートバッグに後ろからゆっくり指を入れ、長財布を抜き取ろうとしていた。 御風神舞愛(みかざみわ まう)は、スクールバックを漁り、お弁当の包みからピンク色のクマの爪楊枝を見えないように取り出す。 『ミッチ、あの人イケメンじゃね?』 『えっどこ?どこ?』 (行って) 爪楊枝は、手からすり抜けると弾丸のように飛んでいき、男の中指に深く突き刺さり、ピンクのクマがビヨヨンと揺れた。 『痛えっ!?』 男の声と共に、長財布が床に落ちて、小銭が散らばると、老婦人は振り向き事の次第を知る。 『━!私の財布?ど、泥棒ーー!』 手を押さえた男は、周囲の乗客が取り押さえ、駅員に引き渡された。 『さっきの泥棒、痛がってなかった? 可哀想』     
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