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おののく暇なく無限に集まり続ける蚊たちに歯止めを聞かすため、私は下駄箱の上に常備してある殺虫剤……この平屋は巨大であると同時に旧くもあり、古くもあるので、虫は蟲になり無視できないほど潜んでいるのだ……を手に取り、蚊柱に吹きかけた。蚊たちは蚊麗に、しかし数匹は、殺虫剤の魔手から逃れることが出来ず、墜落していくものもいたが、その多くは逃げおおせ、空をよぎった魔手は、壁にしがみついていたゴキブリを道ずれに力尽きた。
私は禍禍禍と笑った蚊蚊蚊の蚊柱に呑まれ、体に張り付く蚊たちを静観しながら、王手飛車どりの意味を考えていた。
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