銀杏の木

1/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

銀杏の木

木枯らしがびゅうっと吹いた。銀杏の葉が俺の部屋に1枚入ってゆらゆらと落ちていった。俺の家は築25年のぼろアパートの1階の銀杏の木の隣にある。その銀杏はオスの銀杏で、あの、独特の匂いを放つ銀杏の実はならない。俺が銀杏にはオスとメスがいるというのを知ったのは小学5年の時だ。俺の小学校には銀杏が沢山あって、秋になると沢山の実が俺の鼻を苛めてきた。俺は銀杏の匂いが大嫌いだ。 あの日は月に1度のクラブ活動があった。俺は入っていたバスケットクラブでひたすら汗をかいた。もう11月だというのにあの日はやけに暖かい日だった。俺が少し涼むために体育館の外にでるとあの、銀杏の匂いが香ってきた。俺は顔を少し強ばらせたあと、人影を見つけた。 「おーい」 俺は声を掛けた。何で声を掛けたのかは今はもう覚えていない。どうやらそこにいたのは同じクラスの由美だったようだ。 「お前そんなとこでなにしてんの?」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!