第1章

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ジャックは薄汚れた布を見詰める。 「…くそ」 薄汚れた布を持ち、ジャックはオッドを追い掛けた。 足の速さには自信があるジャックは簡単にオッドに追い付いた。 と言うのも、オッドはベンチに膝を抱えて座り込んでいた。 「オッド、忘れ物だぞ」 ジャックは座るオッドの横に薄汚れた布を置いた。 オッドからの反応は無い。 「……俺ん家に来い」 「…え?」 オッドは顔を上げ、ジャックの方を見詰めた。 その瞳は涙で潤んでとても綺麗だった。 「お家に行ってもいいの?」 「俺がどういう人間か解っていて来れるんならな」 「……行きたい」 「んじゃあ帰るぞ」 「…うん」 薄汚れた布を抱きしめてオッドは小さく頷いた。 ジャックの部屋に帰ってきて、ジャックは改めてオッドに訊ねた。 「お前の名前は?」 「……」 オッドは少し考えてから、こう答えた。 「オッド、だよ」 答えたオッドの表情は笑顔だった。 『名前は、オッドで良いよな』 『オッド?』 『これからよろしくな、オッド』 オッドと言う名前は、ルカスとの出会いの証。 後にも先にも、オッドで良いのだと語る。 end
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