第十四話「明るみ」

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 かなり素っ気ない文章だったが、これはいつものことなので花衣も気にしないだろう。  だが今日、一晩中一人だと思うと、急にいつもの自室が寒々しく感じられ、一砥は物憂げに立ち上がった。  冷蔵庫の中には、複数の惣菜が温めるだけで食べられる状態で入っていた。  その中から肉料理のタッパーと和え物、さらに500mlの缶ビールを取り出す。  レンチンした惣菜を肴に、一砥は一人でビールを飲んだ。  花衣の作る料理は変わらずの味だったが、向かいの席に誰もいないだけで、いつもより美味しさが半減した気がした。  休職中という立場もあってか、一人で過ごす夜はより長く孤独で、一砥は今夜はもう、酔っ払って早々に寝てしまおうと決めた。        *****  缶ビールを三本空けたところで程良く酔いが回り、一砥はリビングから寝室に移動した。  明日帰宅した花衣から、ダイニングに出しっぱなしの食器で小言を食らうかもしれないが、たとえ二日酔いの耳であっても、彼女の声なら心地よい目覚めのさえずりになるだろうと思えた。  薄暗がりの中、部屋着でベッドに横たわり、いつもより広く感じるクィーンサイズに、もっと大きいサイズに買い換えようと思っていた昨日の自分に前言撤回する。 (大した依存っぷりだ……)     
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