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リビングのソファに座りメールチェックをしていた一砥は、届いたばかりの花衣からのメールを読み、眉を顰めた。
『ごめんなさい。今夜は桜井家に泊まります。夕飯は冷蔵庫に用意しているので、一人で済ませて下さい』
「……マジか」
普段は使わない砕けた独り言が漏れ、一砥はどぅとソファの背凭れに全身で寄り掛かった。
事故から九日。
一砥が退院したその日から、花衣は怪我人の恋人を甲斐甲斐しく世話し、さらに引っ越しの準備も同時に進めと、非常に多忙だった。
だから一日くらい、もうすぐこの地を離れる叔母夫婦と、家族水入らずの時間を過ごすのもいいだろう。
足の怪我も痛みはほぼなく、次の検診で異常がなければ、出社許可も下りるだろう。
たかがむちうちと捻挫程度の怪我で、一週間以上彼女とべったり一緒にいられたのだから、むしろ上等の休暇だったと言える。
週明け早々、桜井夫婦は鎌倉に、花衣はこのマンションへ引っ越して来る。
そうすれば今度こそ完全に、彼女と朝から晩まで一緒にいられる日々が始まる。
そう自分を納得させ、一砥は倒していた上体を起こし、メールの返事を送った。
『分かった。叔母さん達によろしく』
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