第十四話「明るみ」

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 そして「君自身、どれがいいかまだ悩んでいるだろう。だから第三者の意見も聞きたいかと思ったんだ」と続けた。  彼が自分以上に自分を理解してくれていることに驚き、花衣はパァと表情を明るくして、「はい。ありがとうございます」と言った。  結納日は大安の四月二十三日を予定しており、レンタル店の社長は、「今月中にお返事頂けたら助かります。それから当日の朝にヘアセットとメイクの担当もご用意致します」と言ってくれた。  その後で社長は、結婚するなら式用の着物や結婚後の留袖なども必要になるだろうから、その際もぜひ当社をご利用下さいとアピールした後で、二人を店の外まで丁重に見送ってくれた。  社長自ら接客に当たったことで、他のスタッフもかなり仰々しい接客態度で、花衣は成人式で利用したレンタル店での気さくでフレンドリーな接客と比べながら、一砥と一緒だとどこでもこの店のように、王族のように扱われるのかなと思った。  どちらの接客が上とは言わないが、肩が凝るのは明らかに前者だろう。  しかし恋人の気分を紛らわせることには成功したようで、店を出た後に一砥は笑顔で、「せっかく外に出たんだから、このまま昼も外で食べないか」と言った。  花衣は笑顔で「いいですよ」と快諾した。
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