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中の振動はタクシーに乗ってもなお
動きを止めることはなかった
俺は声を必死に抑えながら
早く家に着くことだけを願っていた
タクシーが止まり、瀬戸さんに抱き抱えられて降りる
目の前に広がる高級マンションが
家に帰ってきてしまったことを
俺にはっきりと分からせた
記憶がよみがえって
色々な感情が混じり合う
瀬戸さんは躊躇することなく
俺を抱いたまま中に入る
俺はとても怖くなって
この場から離れようともがく
仁:っやだ、やだ
いきなり暴れ始めた俺に瀬戸さんは
表情一つ変えない
ただ家に帰っていく
瀬戸さんに敵うはずのないと
身体も心も分かっているのに
抵抗し続ける
あるところまでくると、瀬戸さんの手が離れて俺は下に落ちた
倒れこんだ先を見ると息が苦しくなる
俺はこの玄関を知っている
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