第一章 夏への扉 《The door to summer》

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……神奈川県警は舘須賀署に捜査本部を設置、捜査を開始しました。現場は見通しが悪く、捜査本部はテレジアさんが待ち伏せを受けて銃撃された可能性もあると見ています。 事件の動機や犯人像については現在捜査中ですが、現場からは関東に勢力を持つ広域暴力団のバッジが発見されており、警察では暴力団が対立する組関係者の車と間違ってテレジアさんの車を銃撃した疑いがあると見て、捜査を続けております……。 「ねぇ聞いた?人違いで撃たれて死亡だってよ。同じ市内じゃない」 のえるが野菜ジュースのパックを啜りながら呟いた。 「銃弾数十発を撃ち込まれて即死だって。まるでマフィア映画ねぇ」 「本当、怖いわねぇ。明日から夏休みだし、早く犯人が捕まるといいけど……」 そう言って、薫が紅茶のカップを口へ運びながら、外に視線を向けた。食堂の窓の向こうでは、きらめく夏の陽射しが、芝生の上に降り注いでいた。 「お疲れ様でした、お嬢様」 部屋に入ってきた人物を見て、シックな制服を身につけたメイドが恭しく挨拶をした。 本部棟最上階にある、学園理事長室。校長のシュトラウスに導かれて、金髪の少女が部屋に入ってきた。
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