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七月十九日 〇二時〇三分
――雨が、静かに降っていた。
夜の海が、黒々と、目の前に広がっている。その海を抱くように伸びた海岸線に沿って、一本の道が、闇の彼方に向かって走っていた。
雨の中、街灯に照らされて、闇の中に浮かび上がる湾岸道路。それが、三浦半島東部を縦走する幹線道路であることを示す標識の下で、レインコートを着た数人の警察官が動き回っていた。
投光機の光が、路上の一角を照らし出している。その光の輪の中に、黒のBMWが一台、浮かび上がっていた。
「こいつはひどい……」
投光機の下で、警部補の階級章を付けた警察官が呻いた。
銃弾が、車体の至る所に食い込んでいる。数十発の弾丸が貫通したフロントガラスは蜘蛛の巣のような亀裂が走り、ボンネットからは、血のようにどす黒いエンジンオイルが流れ出していた。
「……まるで、軍隊か何かに襲われたみたいだな。いったい誰が、こんなことを……」
警部補がそう呟いた時、近くでばたばたと車のドアの閉まる音がした。そして、闇の中から、数人の人間の近づく気配が伝わってきた。
やっと、本署から応援が来たか。
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