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「一都、アンタは一つだけ間違っているわ」
そう言う楓はどこか自信ありげな表情をしている。
「間違い?」
「そう…アンタの間違いは…」
ビシッ!
立てた人差し指を俺に向けて一言。
「私に人気が出ない前提で話していることよ!この私が人気者になれないわけないじゃない!」
「凄いぞ、楓。失敗した奴が言ってそうなセリフとしては120点満点だ」
「はぁ!?人生失敗してる不人気陰キャが私を馬鹿にしないでくれる!?」
「んだとゴラァ!?淫キャにもプライドはあるんだぞっ!?」
「陰キャは認めるのかよっ!」
ここから更に言い合いは続いたわけだが、楓は一向に諦めそうにない様子だった。
このままでは本当に楓がネットのおもちゃにされてしまうだろう。
しかし言い合いで罵倒されまくって半泣きになりかけていても、やはり楓は俺にとって大切な家族。
ここで退きたくはない!
「わ…わかった!わかったよ楓!」
ここで俺はこの言い争いに終止符を打つために話 ( というか一方的な罵声 ) をとぎらせる。
「やっと自分がキモくて臭くてダサくて陰湿でキモチ悪いクサレ童貞だってわかってくれたのね」
「もうそれでいいからこうしよう」
俺からの提案はただ一つ。
楓に投稿者としての素質があるのかどうか確かめるべく、実際にどのような動画を作ろうとしているのか披露してもらうことだ。
もしそれの出来が本当によかったら俺は楓のデビューを素直に認めるし、もうこれ以上首を突っ込まない。
人気投稿者でもネットのおもちゃにでもなんにでもなればいい。
ただ、あまりにも酷い出来だったら今回の話はなかったことにしろ、と再び罵声を浴びる覚悟をしながらおそるおそる言うと意外にもすんなりと受け入れてもらえた。
それほど自信があるということだろうか。
それだけ自信がある動画…少しだけ興味が沸いてきたよ。
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