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翌日。
入院先の病院に着くと、早速婆ちゃんの病室に向かう。
部屋を覗くと、婆ちゃんが座っているのが見えた。
「婆ちゃん~
頼まれた本持ってきたよ!」
「おお待ってたよ。随分遅かったじゃないの」
本を受け取ると、ニコニコその中身を確認している。
婆ちゃん、またちょっと痩せたなぁ…
あんまり…病気良くないのかな…
暗い表情になりそうだったので、あの本の事を切り出すことにした私は、急いで鞄からあの本を取り出す。
「ねー婆ちゃん…
本探してたら、これ見つけたんだけど…
何これ?本なの?
それともノートなの??」
婆ちゃんの前にこの本を差し出すと、婆ちゃんは目をまんまるにしたまま、固まって動かなくなってしまった。
3分くらい返ってくる反応を待ってたけど、一刻に動く気配がないことにちょっと不安に感じて、
「ば…婆ちゃん…?
大丈夫??」
と思わず上ずった声で聞いてしまった。
婆ちゃんがゆっくりとこちらを向くと、
「これ…どこにあったんだい?」
と酷く興奮した様子で反応が返ってくる。
その興奮ぶりをみると、私がさっきした質問は聞こえていなかったに違いなかった。
具合が悪いわけではなさそうだったので、
「え? 物置の本棚の奥にあったよ」
と会話を続ける。
婆ちゃんは、ははぁ…と顎に手をやると、ふんふんと何故か1人で納得している。
こちらは納得する要素が1個も無く、全くわけがわからない。
「ねぇ…何この本?
全然わかんないんだけど。1人で納得してないで私にも教えてよ」
少しブスッとした言い方で、婆ちゃんにそう言った。
「あぁごめんごめん。
ちょっと興奮しちゃって…
いやぁまたこの本と会えると思ってなかったから」
先程よりも殊更ニコニコ笑顔で、私にそう言う。
また会えるって自分の家にあるものじゃんか。
ボケちゃったのかなと不安に思ってると、それを察したのか、私に近くに来いと合図をする。
私が婆ちゃんのすぐ側に来ると、婆ちゃんは小さな声で、
「落ち着いて聞いてね…
この本はね…未来が視えるのよ。
マナちゃん、次の持ち主に選ばれたのよ」
と言った。
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