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障子を開けてそのふちに腰掛け、柱に背中を預けて片足を立てて座している。
黒の着流し姿に長い黒髪。
月の光を受けて鈍色に光るそれは、紺色の組み紐で一つに束ねられ、細身だがしなやかな背中に流れ落ちている。
男は階下の日常的な光景に飽きた様子で目線を上に上げると、花街から聞こえてきたお囃子や三味線の小気味良いその音に耳をすまし、物憂気に右手をあげて頬杖をついた。
まだ二十代前半と見受けられる男の細顔は、着流しの袖からのぞく若竹のような腕と同じように青白く、半ば伏せた切れ長の眼は、どこか世の中を一歩下がった所から見ているような、斜に構えた雰囲気を漂わせている。
男はふと静かに目を開いた。
同時に左手奥の襖が勢い良く開いて、何者かが部屋の中に入ってきた。
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