78人が本棚に入れています
本棚に追加
鬼伯がしゃべり終えたのを見計らって、清月は左手を着流しの袖の中に入れた。そして再び出された左手の上には、紫のふくさに包まれた塊が二つ握られていた。
「館林忍軍からすでに前金として百両もらっている。依頼の内容を果たしたら、もう百両をもらうことになっている」
清月は小判の包みを鬼伯へ差し出した。久しぶりに見る金の輝きに、鬼伯がごくりと音を立てて唾を飲み込む。
清月は何気ない素振りで小判を再び袖の中へとしまった。
「鬼伯。お主も知っての通り、我らは他の忍軍のように大名に仕えていない。我々『紫嵐隠密組』は、我らの力を買いたいという者達の依頼があってこそ、生計を営めるのだ」
最初のコメントを投稿しよう!