【一の巻】華と月

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 鬼伯がしゃべり終えたのを見計らって、清月は左手を着流しの袖の中に入れた。そして再び出された左手の上には、紫のふくさに包まれた塊が二つ握られていた。 「館林忍軍からすでに前金として百両もらっている。依頼の内容を果たしたら、もう百両をもらうことになっている」  清月は小判の包みを鬼伯へ差し出した。久しぶりに見る金の輝きに、鬼伯がごくりと音を立てて唾を飲み込む。  清月は何気ない素振りで小判を再び袖の中へとしまった。 「鬼伯。お主も知っての通り、我らは他の忍軍のように大名に仕えていない。我々『紫嵐隠密組(しらんおんみつぐみ)』は、我らの力を買いたいという者達の依頼があってこそ、生計を営めるのだ」
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