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釈然としない気持ちになっていると、どこからか硬質な足音が聞こえてきた。
…こっちに向かってきている。
男の方を見れば、足音が聞こえてくる方と反対方向へ駆け出したところだった。
いつの間に立ち上がったんだ。
にしても、うん。
面倒ごとの匂いがぷんぷんするな!
遠い目になったわたしの元に現れたのは、王家の紋章が描かれたマントを靡かせた…王宮騎士。
わたしはヒクッと口元を引きつらせた。
待って。これは思っていた以上に厄介な感じじゃないか?
王族を守る為の王宮騎士から逃げる王族。
王族を追う王族を守る為の王宮騎士。
王宮から無断で抜け出した王族を安全の為に捕まえようとしている?
まっさか。もっと殺伐とした雰囲気してる。
「お前、血まみれの男を見たか」
温度の感じられない声で私に話しかけてきた王宮騎士を仰ぎ見る。
ゴミの上に座っているからか、立っている王宮騎士の威圧感がすごい。
「その男をどうすんの」
「見たのか見ていないのかを聞いている」
「罪人?」
「見たのか」
「なあ騎士サマ、ギブアンドテイクって知ってるか?」
騎士の雰囲気が途端に尖る。
「私がスラムの女1人殺したとて、誰も気にしないのだが?」
「おっかないなぁ」
やだやだ、騎士サマったら短気。
にしても、うーん。情報が欲しいんだよなぁ。ちょっと事情が分からなすぎる。
ただ、あの王族を敬称も何も付けずに“血まみれの男”と呼んだのが気になる。
お忍びだから?それにしては蔑むような声音だった。
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