老婆は語る

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薄汚れた路地裏は、いつだって死んだように横たわる人間と本当の死者が同じように転がっている。 わたしは腹が減って腹が減って力が出なくて、死んだように転がっていた。 転がるわたしのそばには、今にも死にそうなババアが薄暗い壁に背を預けて座っていた。 土気色の肌に、枯れ枝のような身体。目だけがぎょろぎょろと大きいババアは、夢見るようにうっそりと口元を綻ばせてぼそぼそと語り始めた。 「嘘のような本当の話をしよう」 誰に聞かせるでもなく、ババアはそう語り始めた。大きな目は、あの光り輝く星を見ていた。鮮烈な光で一日中世界を照らす星だ。あの星が無ければ、世界は暗闇に包まれる。 「かつてこの世界は暗闇に包まれていた。それ故に、光を求めて人々は星になろうと死んでいった。 それを憂いた幼き王は、自分は強い力をもっているからきっと世界の全てを照らすことができると考え、星になろうとした。 しかし、世界一の魔女であったリヤーナがそれを止めた。そして、代わりにリヤーナが星になった。 それがあの星、“リヤーナ”。魔女の星」
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