老婆は語る

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聞くともなしに聞いていたわたしは、視線だけを目がくらむほどまぶしいあの星に向けた。 ババアの話は嘘だろう。人が星になるはずないし、何より、魔女は卑しくて汚らしいものだそうだから。 あんなに輝く星になんて、なれるはずがない。 ふと視線を感じて目を向ければ、ババアがぎょろりとした目をわたしに向けていた。場違いに綺麗な濃い青の瞳は、妙な迫力がある。 うっそりとした口元の笑みはそのままに、ババアは打って変わって朗々と私に話しかけてきた。 「お前、名前はなんだい?」 「名前なんか、ない」 「そうかそうか。アタシはリヤーナさ」 「リヤーナ?」 「正確にはリヤーナ13世さ」 「はあ?」 何言ってるんだこのババア。常に死と隣り合わせで短命なスラムの住人に13人も同じ名前をつけるなんて芸当、出来るわけがない。 ……いや、でも、もしかしたら。 「お前、没落したお貴族サマか?」 「違うね。アタシはただ、リヤーナの13代目ってだけさ」 「はああ?」 なんだそれ。訳わからん。腹が減ってるからあんまり頭が働かないし、そもそも考えることは苦手なのに。 ババアはわたしを見たまま、言った。まるで宣言するように。 「それで、今からお前がリヤーナ14世だ」
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