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「ミラを元に戻す、なあ。そもそも元のミラがなんなのかわかんねぇんだけど」
今のミラはなんなの?偽物?
首をひねるわたしに、ギアスは言った。
「元のミラは、つまり、みりょうの魔法を使えなかったころのミラってことだ」
「…ん?お前、ミラが魅了の魔法使ってるって知ってるのか?」
「まあ、うん。確信は無かったけど」
「なんで!?」
目に見えない魅了の魔法を只人がわかるのはおかしい。
そして知っててわたしをルキの元に行かせなかったのもおかし…ギアスにホフチャラクの命令に背いてまでルキを助ける義理はなかったからそれは当然か!
「ユラが言ってた。ミラはユラのためにホフチャラクと契約を結んで、魔法を使えるようになったって。それは、たぶん、みりょうの魔法だって」
「ちょ、っと待って。ミラは魅了の魔法を使うことを望んでなかったのか?」
歪な魔法もどきの代償は、はっきり言って大きい。自分で望んだのならそれは自業自得だ。だが、そうじゃないのなら。
「代償が必要だと、知っていたのか?」
「だいしょうが必要だとは知っていた、みたいだ。だけど、そのだいしょうの内容は知らなかっただろうって…いや、でも、知ってたのかな…」
ギアスは言って、目を伏せる。
「わからないんだ。ミラはユラに関する記憶がごっそり無いから。契約したときのことを、おぼえてない」
「なんで記憶が…」
「だいしょう」
ギアスが告げたのは、魅了の魔法の、実に皮肉な代償だった。
「みりょうの魔法のだいしょうは、最愛。みりょうの魔法を得る代わりに、最愛が消える」
誰をも魅了することができる魔法。その魔法を使えば誰もが己に好意を抱く。
けれど使用者自身は最愛を失う。話の流れからして、自分に最愛がいたという記憶さえ失われるのだろう。
数多の愛を意のままにする代わりに、自身は最愛がわからない。最愛の消失は、恐らく過去現在未来全てでだろう。過去いた最愛も、現在の最愛も、そして未来で最愛を得る可能性すら消える。歪な魔法の“代償”というのは徹底的なものだ。
だって魔法は、ひどく魅力的で強力な力だ。
現在のみのものであるはずがない。
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