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☆☆☆
ナハタ村の中心。粗末な広場に巨大なテントが設営されていた。赤と白の鮮やかな縞模様のそのテントは、セリヤサーカス団の公演場だ。
公演は今日から七日日間。村とされるほど小さな地区にも関わらず、テントの中はぎゅう詰めで、人の発する熱気でモワッとしている。
ギアスとの話し合いが終わって朝食を食べ終えた途端にテントに引っ張ってこられたわたしは、そんな賑やかで華やかな舞台裏で奔走していた。
「リヤーナ!赤い宝石がついた額飾り持ってこいっつっただろ!」
「ああ?ンなもん自分で持ってこいや!」
「雑用係の分際でなんて口の利き方だっ!いいから持ってこい!」
「リヤーナ!早く舞台セット片して!間に合わないっ!」
「ほらよ飾り!
ちょい待て!照明もうちょい待て!」
わたし寝起きで裏方仕事初日なんだけど!?
どいつもこいつもわたしを呼びやがって!!
慌てて舞台裏から暗転した舞台に移動して、さっきまで行われていたルッソの怪力自慢にて破壊された林檎と岩と瓶を片付ける。
痛!瓶のカケラで指切った!
しかし痛がっている暇がない。わたしは血を流す指をそのままに、粉砕された全てを纏めて、裏へと撤収。そのまま次の舞台の為にふわふわキラキラする布を掴んで舞台にしいて回った。
そうしてなんとかかんとか一息ついた。
舞台に目をやれば、ひらっひらした桃色の可愛らしいドレスを身に纏ったミラが微笑みながら歌っていた。
可愛らしい小鳥の歌。楽しげな子供の歌。焦がれるような、愛の歌。夢見るような桃色の瞳にじわりと闇を滲ませて、ミラが観客を見渡す。
「…だからわたしに、愛を頂戴?」
ムカつく歌詞だと、わたしは鼻で嘲笑った。
観客は、比喩でもなんでもなく、ミラの虜だ。
これが狙いかホフチャラク。魅了の魔法で観客を強制的に虜にして、金を落とさせる。そりゃあ儲かるだろうさ。だけど、そんなの。
「馬鹿らしいと思わないのかね」
ポツリと呟いた声は、轟くような拍手に掻き消された。
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