はじまり

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「ルルゥが近くにいたのか…、ならいいが真人、勝手にさっさと行くんじゃない」 「ごめんて、こっちにたくさん生えてるのが分かったからさ」  二十歳になろうかという大人に対して、ヤトの心配は大げさに見えるが、それもこれも俺のステータスの低さが原因だ。この辺の低レベルモンスターでも、下手をしたら一発でやられる可能性があるのだ。トホホなことだが、仕方がない。 「一人で行動する時は、せめてスロットを有効にしておいてくれよ」  そう言われて、すっかり忘れていたと頭をかいた。確かに言う通りにした方がいいかもしれない。座り込んでポポ草摘みに夢中なルルゥを一瞥して、これじゃいざとなったら間に合わないからな、と肩を竦めた。 「スロット、ティム」  呟くと、ぐんっとステータスが上がるのを感じた。  ティムは数日前に出会った犬の獣人族の名前だ。もっとも出会った、というのは語弊があるかもしれない。何しろ彼はとうに亡くなっていたからである。  そして旅の同行者となっているキツネ耳の彼らと出会ったのも同日である。今でこそ呑気に薬草摘みの依頼などやっているが、出会いはとんでもなく大変だった。というか、もっぱら俺がピンチなだけだったんだけど。  ――俺は、転移者だ。  つい一か月前まで、これから普通の学生生活を送るのだろうと、信じて疑わなかった。そう、まさに大学生になりたてほやほやの登校初日、その日にすべての歯車が狂ったのである。
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