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見上げると、そこにはどこまでも青い空。雲一つないとはまさにこのことだ。
手のひらでひさしを作って、俺は何気なく上を見上げた。
ぽつりと頬に水滴がかかった気がしたのだ。
「今日って、雨降るって言ってたっけ?」
俺は、有住川 真人(マヒト)。
晴れて大学生になったばかり、そして今日がその初日だ。いつも眠そうな顔をしたちょっと冴えない印象、とは中学時代のクラスメートの談である。確かに大きめの黒縁メガネと、少し長めの前髪のせいでもっさりとしているが、これはわざとそうしているのだ。なぜなら隠された瞳は青く、その高い鼻梁はどこか日本人離れして悪目立ちしてしまうからである。本来なら何を恥じることもない容姿だが、俺はこの姿が嫌いだった。
なぜならこの容姿のせいで、小学生のころから何かと浮きまくり、他にも要因はあったもののうまく人付き合いが出来なくなって、中学のころ立派な不登校になったからである。
「朝の天気予報では降水確率0%だったよ」
隣を歩く俺にそう答えて、眩しそうに晴れ渡る空を仰いだのは、ゆるく巻いた栗毛の髪をサイドで二つ結い上げた少女だ。今年から高校生になった妹である。今日は兄の初登校ということで、心配でくっついてきたのだ。って、俺は小学生か!
透き通るような白い肌に、大きな青い瞳がはつらつと輝く、見るからに活発そうな妹は、兄の欲目を除いてもますます美少女に成長した。ちなみに俺たちはれっきとした日本人だが、父親がフランス人とのハーフで、特に妹はその血を色濃く受け継いでいる。加えて言うなら、上の兄は黒髪ではあるものの、やはり青い瞳で、およそ日本人とは思えない容姿をしている。
そんな中で俺は、黒髪で、瞳も一見すると黒と見紛うほどの青という、一番日本人らしい容姿だった。けれど、日本人の中にあっては、やはり何かが違うのかうまくなじむことが出来なかった。
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