目が覚めるとそこは……

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目が覚めるとそこは……

 ぼんやりと白い光が見えた。  見えたというか、感じたという方が正しいかもしれない。実際、眼を開いているかどうかの感覚が曖昧だった。はっきりとしない意識と、動かない身体。  未だうまく思考が回らない。  すると、光の中心でひそひそと声が聞こえてくる。言い争っているようにも思えるが、苦言を呈している方の言葉遣いが丁寧なことを思うと、上司と部下といった感じだろうか。 「あ…腕もげちゃったか、あの事故は余計だったよね」 「あんな道の真ん中で天啓なんか降ろすからですよ。腕に限らず、身体の右半分の損傷が激しいんです。頭も味噌出ちゃってますし、かわいそうに…綺麗な青い瞳だったのに…、ほら見てください、片方転がり落ちてますよ。ショックで肝心の魂が壊れたら何にもならないんですよ」  え、なに、こわいから!なんの話してんの!?  事故って、さっきの交通事故の事?まさか俺のことじゃないよね?味噌って、脳みそ出ちゃってるの?!それ死んでるよね? 「大丈夫大丈夫、ほらお詫びにこれをこうして、よしっ、これでどうじゃ!」 「だ、だめですよ、そんなことしたら、…って、なんてことするんですか?!そんなことしたら」 「大丈夫じゃ、もうくっついたし」 「…………」  なにしてんの…ねえ、何してんの!?やめて、やっちまった感出すの。 「どちらにしろ損傷は直さないと地上に戻せないんだからこれでいいのじゃ。治癒では時間がかかるし、ここに長時間留めても置けないのじゃからな」 「それはそうですが、いっそ転生させた方がよかったのでは?」 「!」  今、あきらかにハッとしたよね。  なんなのこの迂闊な人。しかも転生とか、訳の分からないこと言ってるし。 「ご、ごちゃごちゃ言うでない。ちょっといじったけど、ちゃんとステータスも人間ってなってるし」 「その横に、反転表示で(?)とかついてますけどね」 「……これ以上、儂いじらんほうがいいかな」  そうですね、と力なく答える声。  たぶん、上司には強く言えないのだろう。それでも、部下の人がこれ以上ないほど苦虫を噛み潰したような顔をしているのが目に浮かぶ。
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