3. 初めてのお部屋デート

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 完全に裏目に出た。一心不乱に物事を考えるのが大好きな九王沢さんの習性を利用したつもりが。思い出すも何も。面と向かって言えたらこっちだって、苦労しない。 「最初に『お』で最後に『い』ですよね…?」  おっぱいだよ。  言えない。いつか大声で言ってみたいが。それでなくても以前、依田ちゃんが吹き込んだ『那智先輩は性的にやりたい放題』だと言うデマを解消するのに、あれだけ苦労したのだ。 「それは食べ物ですか?それとも別のもの?」 「どっ、どっちだろうね…?」  確かに食べ物かも知れないけど、やっぱり別のものかも知れないぞ。 「真剣に考えて下さい。わたし、絶対手に入れてみせますから!」  九王沢さんがぐいぐい迫ってくる。この角度はまずい。僕の今一番欲しいものが、やたら魅力的に見える。ああっ、あんなに谷間が深い。 「おっ…」 「お!?」  おっぱいだよ。目の前にぶらさがってる!しかもゆさゆさ迫ってくる。限界だ。言うしかない。僕は、覚悟を決めて声を上げた。 「『温度計』ッ!」  …って、そんな度胸あるわけないじゃん。  九王沢さんが電気屋さんで温度計を買って来てくれた。まったく必要ないものなのに暑い中、本当に申し訳なかったと思う。最近の温度計はデジタルでかわいかった。わあっ、湿度もちゃんと表示されるんだなあ。
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