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からの、廃油ラーメンである。全く理解できない。いや、そんなこと言っちゃいけない。僕が悪いのだ。僕が九王沢さんに焼きそばと言うものの定義と外観を、きちんと教えておかなかったから。て言うか、そこから教えてあげないと全然ダメだったのだ。
「あ、あのさ」
僕は絶句したあと、動揺を取りつくろって言った。
「と、ともかく、これはいいから。九王沢さん、これから外のお店にでも何か食べにいきましょう。ね」
「まっ、待って下さいっ!」
トンデモ失敗作を棄てようとする僕の手を、九王沢さんはひっしと握った。
「これはわたしが処理します。ですからもう一度、やらせて下さい。お願いします、次は必ず、那智さんのお昼に完璧な焼きそばを提供しますから!」
「いっ、いいですよ。焼きそばごとき、そんな必死に作ろうとしなくたって」
とは、言えなかった。あの九王沢さんが必死にお願いして、通らないことは地球上に存在しないのだ。
「分かりました。こっちは僕が引き受けますから、九王沢さんは自分で焼きそばを作って食べて下さい」
僕はそこだけは説得した。
だって九王沢さんみたいな子に、こんな産業廃棄物みたいな汁麺を食べさせるわけにはいかない。
「那智さん、そんな…だめですっ、やめて下さいっ」
「いいですよ、元は焼きそばですし」
僕は決意して割りばしを採った。彼氏としてここは、無理はしてあげなくちゃならない。いやむしろ、微笑ましいじゃないか。ルックスばかりでなく、その感性と知性もワールドクラスの九王沢さんの初めての手料理が、無惨にも失敗した焼きそばなんて、かわいすぎる。
ところがだ。
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