馳ぜて 溶けて 落ちる
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「ほら」 そう言って、指で掴んだ唐揚げを菜乃に向けて持ち上げた。 菜乃は迷ったように目を伏せ、それでも腰を屈めてぱくりとそれを食べた。 指に、僅かに唇が触れた。 唐突に沸き上がった欲望が、頭の中で蠢き、俺の思考を朱に染め上げた。 「んん、お母さんの唐揚げ、やっぱり美味しい」 菜乃はもごとごと口を動かしながらそう言った。 俺はゆっくりと立ち上がり、彼女の細い手首を掴む。
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