馳ぜて 溶けて 落ちる

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夕飯の席で、菜乃が箸を咥えて「幸せ」と呟いたときの表情が。 風呂上がりに、ふわりと掠める石鹸に混じった彼女の匂いが。 夜中に俺の部屋の前を通るときの、ぺたぺたという足音でさえも。 菜乃の存在が、菜乃から生まれる匂いや音、その全てが少しずつ俺を狂わせていった。 菜乃の唇の感触を確かめたい。 その細い首筋に、俺の痕を付けたい。 菜乃の喘ぐ声が聞きたい。 それが涙にまみれたものだったとしても、それでもいい。 菜乃の全部を、俺のものにしたい。
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