馳ぜて 溶けて 落ちる

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すぐそこにある白い肌に、何度も手を伸ばそうとしては自分を押さえ付けた。 父や義母が声を掛けてくれて、何とか思い(とど)まることができた日も度々あった。 この両親を裏切ろうとした自分自身を、毎日のように罵った。 大学生なんだから、家を出るという選択もあったはずだ。 それでも俺は菜乃から離れることができずに、その柔らかい檻にずっと囚われ続けた。 出口がようやく見えたのは、菜乃が大学受験に合格した、凍える程に寒い冬の日だった。 自宅から片道二時間以上のところにある大学を選んだ菜乃は、「一人暮らしをしたい」と言った。 難色を示すかと思っていた義母も、父も、菜乃の背中を優しく押した。
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