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「もっと、して。‥‥‥‥お願い」
ねだる声は、擦り切れる程に繰り返したどの想像のそれよりも、甘く響いた。
大きな瞳は、今にも涙が溢れ落ちそうな程に揺らめいている。
俺は彼女のことを幸せにはできない。
この呪いのような言葉を何度となく繰り返し、心の奥深くに閉じ込め、押さえ付けてきた情欲。
可愛くて愚かな菜乃は、彼女のために作ったその心の柵を、無神経にも軽々しく、いともあっさりと越えてくる。
もう止めてあげられないよ、菜乃。
心の中でそう呟いてから、唇を塞いだ。
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