916人が本棚に入れています
本棚に追加
間もなく高校の文化祭という時期で、俺はクラスの出し物となっていた手品を、放課後、毎日友達と練習していた。
その日もこれから文化祭の準備で出掛けなきゃいけなくて、正直、父の再婚のことなんて勝手に進めてくれればいいのに、と思っていた。
菜乃は俺の家のリビングのソファにひとり、所在なさげに座っていた。
そのちいさな背中が緊張で固くなっていて、何だか気の毒に感じた俺は、遅刻を覚悟して彼女の隣に腰を下ろした。
下を向いている菜乃の目の前に、片方の手を広げて見せる。
菜乃はきょとんとした顔で、俺の手のひらを見つめた。
ぎゅっと握って見せ、それからもう一度、ゆっくりと指を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!