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俺の手の中から、赤い花びらがひらひらと溢れ落ちる。
やった、成功した。
心の中でそう声を弾ませた。
花びらは、菜乃の膝の上に舞い降り、彼女の紺色のスカートを彩った。
「えっ‥‥すごいっ」
菜乃は大きな瞳を輝かせて、俺の方へ顔を上げた。
その蕾が花開いたような笑顔がひどく可愛くて、彼女のことを兄として守っていかなきゃと、ぼんやりと、でも強くそう思った。
父と義母の再婚話は、坂道を転がり落ちるようにすんなりと決まった。
義母と菜乃は、間もなくして俺の家に越してきた。
広かった家が狭く感じるようになったが、それも居心地がいいと思えるくらいに、義母と菜乃はすぐに家族として俺の生活の中に溶け込んでいった。
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