馳ぜて 溶けて 落ちる

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「お兄ちゃん」 リビングのソファにもたれかかり、借りてきた映画を観ながら欠伸をしていた俺の膝の上に、菜乃は遠慮なく座ってくる。 テレビの画面の半分くらいが、菜乃の頭で隠れてしまった。 「何?」 少し迷惑げな声をあえて出してみるが、菜乃はそんなのお構いなしで、俺に黒いヘアゴムをぎゅうと押し付けた。 「こないだのやって。あの、後ろでくるくるって結ぶやつ」 菜乃の髪は、肩下くらいまでのさらさらのストレート。 菜乃の通う中学では、肩より下まで髪を伸ばしている生徒は髪を結わなくてはならないという校則があるらしかった。
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