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下手くそな菜乃の代わりに一度、雑誌を見ながら髪を結んでやったことがある。
それ以来、菜乃はよく俺に、「こないだのやって」とねだるようになった。
平日の朝は特に忙しい。
面倒だと思う日ももちろんあったけど、一人っ子だった菜乃の寂しさを埋めたやりたいと思い、可能な限り彼女を甘えさせた。
「出来たよ」
そう言って、菜乃の背中をぽんと押した。
菜乃はもう俺のことなんかすっかり忘れて、俺が観ていた映画に入り込んでしまっている。
目の前で揺れる彼女の後れ毛を見つめながら、俺は思わず苦笑いを溢した。
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