馳ぜて 溶けて 落ちる

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大学に入学してからは、生活ががらりと変わった。 規則正しく、朝決まった時間に起きることはなくなった。 変わらず自宅から通学していたが、夕飯を家族と一緒に食べる回数もぐっと減った。 菜乃の顔を、毎日見ることもなくなった。 「たまには菜乃花の相手もしてやれよ」 夜中12時を過ぎてからリビングのドアを開けたときには、父にそんなことを言われてしまった。 翌日、久しぶりに髪でも結んでやろうと、早起きしてリビングに降りた。 菜乃はちょうど、通学用の鞄を手に取ったところだった。 中学のときに一生懸命受験勉強に取り組んだ菜乃は、難しいと言われていた俺の母校に入学していた。
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