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母親の高圧的な態度を皮切りに、祖母が侮蔑の眼差しで。父親はあからさまに面倒くさそうに、そして姉は少し困ったような、それでいて好奇心に満ちた様子で翡翠を見つめる。
……この家族からこうして注目を集めたのなんて高校の時以来かも……
その時の雰囲気と今はとてもよく似ていた。それは高校卒業後の進路を決める際の事だった。ちょうどこのような感じで家族に注目を浴びた。
「進路も何も、真珠の影武者で占い師になる。これで良いじゃない。他に何があるというの? 翡翠には占いしか出来ないんだから」
進路も母親のこの一言で決定した。反論などする気も起きなかった。本当に、自分は占いしか出来なかったから。
「ちょっと、時間が勿体ないじゃないの! 言いたい事があるならサッサと言いなさいよ。相変わらず愚図ね!」
母親のヒステリックな声で我に返る。
「あ、は、はい! すみませんでした!」
思わず立ち上がって謝罪の言葉を口にしてしまった。恐るべき、幼い頃からの擦り込みである。
……違う! 違う! これじゃ全然変わらない。今言わなきゃ! この機会を逃したら、また元の木阿弥になりそうだもの。今出来ない奴が、先延ばしにして出来る訳がないんだ。しっかりしろ、自分!……
己に喝を入れ、無意識に浅くなっている呼吸を深くゆっくり、腹式呼吸で行う事を意識した。そしてそのまま立ったまま、母親を真っすぐに見つめた。明らかに不機嫌そうに見つめ返す母。祖母と父親は退屈そうだ。姉だけが、興味深く翡翠を見つめている。
「実は、私……」
「ついに彼でも出来たんじゃないの? お化粧なんかしちゃって、お目かしまでして。デートでもしてきたんじゃない?」
翡翠が切り出すのと同時に、真珠が揶揄うようにして語り出した。
「え……?」
あまりに突拍子も無い事を言い出されて、翡翠は頭が真っ白になった。母も父も祖母も、ポカンと口を開けて翡翠を見つめた。
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