第二話 役割

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 このまま、こうして姉の影武者の占い師のとして影の存在のまま歳を重ね、姉の子供か一族の子供に引き継いで、裏方事務系の仕事に移り……。まだ高校を卒業してさほど経っていないが、そうして歳老いていくのだろう。結婚は、母親に見合いを勧められて、相手が気に入ってくれたらするかも知れないが。地味で暗い自分を妻にしたい等という御奇特な方がいるとも思えない。  人付き合いは苦手だ。だが占いは好きだ。けれども姉のような話術は持ち合わせていない。今のまま、影武者が楽だ。日陰のまま。それがこの世に生を受けて果たしていくべき役割。星回り、どの占いで見ても上手くいくと出ている。これで良いんだ、これで。高校を卒業して進学や就活に悩む必要もなく、両親が提示した道を行くだけ。もの凄く恵まれてるじゃないか……。  スープだけになった器をぼんやりと見つめながら、翡翠は自分に言い聞かせる。そしてスープに映し出された細い銀縁眼鏡、痩せた頬、そのわりに分厚い唇が目に入り慌てて席を立った。そろそろ皆帰宅する頃だ。食器を洗い、お湯を沸かしておくのである。
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