第三話 燻り

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 更に翡翠は思う。今まで気付いてはいたが、気付かないふりをして心に蓋をして来た事だった。堰を切った水のように、感情が一気に溢れ出す。 「人を馬鹿にして!」  翡翠は枕を床に投げつけ、泣きながら激昂する。 「確かに私はブスだしコミュ障だし、暗くて占い以外に何も出来ないけど、でも姉さんだけの力だったら、『KAGAYA』はここまで繁盛しなかった筈よ! 母様父様の代より、明らかに繁盛してるもの」 ……それは、姉さんの並外れた美貌とコミュニケーション能力のお陰で、お前はカスよ……  母親から事あるごとに言われてきた台詞が、胸を過ぎる。途端に硬直し、両耳を両手で思い切り塞いで大きく首を左右に振った。 「煩いっ! 出来損ないに生んだお前たち夫婦の責任じゃないか! 誰が、誰が好き好んでブスで暗くてカスになんか生まれるかよっ」  嗚咽が込み上げる。祖母や父親に至っては、いつも化け物を見るような目で何も言わずに自分を見ている。そんな印象しかなかった。 (出て行こう。皆から追い出されない内に。遊びに行ったりなんて殆どしなかったお陰で、アパートを借りて1年くらいは暮らしていけるぐらいの貯金はあるし)  翡翠は涙を吹いた。スマホを棚から取り、 『占い師募集』  と入力、検索を始めた。
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