第三話 逆襲、そして……

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「秋晴れだな」  まるで鈴虫のように高く澄んだ声で、我にかえる。 「ゴールデンロッドか?」  振り返ると、彼女がいた。深い翠の瞳に、澄み渡る空が映る。追憶の波間にたゆたううちに、どうやら雨は止んだようだ。 「どうした? 夢から覚めたような顔をして」  再び彼を見つめる女王は、眩しそうに目を細めた。その瞳に、燃えるような闘争心の燻りは見えない。穏やかに凪いだ瞳。森林浴を思わせる瞳に、思わず茅は見とれる。  また、女王も彼に見とれていた。彼の髪は、フサフサさらさらし過ぎて、どうやら雨を弾くようだ。雨だれが、水晶玉の雫のように、髪を彩っている。さながら朝露で出来たシャンデリアを思わせた。陽の光が反射してキラキラと耀き、後光が差すかのように神秘的に見えたのだ。しばらくみつめ合う彼ら。 「そういえば、風の便りに聞いたが……セイタカアワダチソウも最近では人間に随分見直されて、体に良いとかで茶花にするらしいな。また、花だけでなく茎ごと干したものを煮出して入浴剤にすると、混ぜ合わせれば泡立って良い香りがするのだそうだな」  茅は空気を変えるように話し出す。 「私は蝶から聞いたぞ。北の方の米国では、お前達芒が猛威を振るっているとか」  彼女はニヤリと笑った。 「我が弟が率いる群団だな。まさに、歴史は繰り返す……か」  微笑み合う彼ら。そして同時に空を見上げた。    広がる澄み切った蒼穹。藤袴が優しく香り、萩や女郎花、撫子や葛の花たちも秋を謳歌している。銀の穂が風に靡き銀色の海原が広がる。調和するように、セイタカアワダチソウの鮮やかな黄色が彩りを添える。さながら協奏曲のように……。   ~完~  
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