第二話 侵略の記録

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「しかし茅将軍! あいつらのお陰で全滅しちまった植物たちを思うと……」  乱草は口を尖らせる。 「仕方ない。私だって悔しいさ。だが……」  茅は乱草に説明するよう、尾花に頷いて見せた。彼女は軽く一礼して口を開く。  「セイタカアワダチソウは、1つにつき何万もの種をつけるそうです。虫媒介の花でありながら驚異の繁殖力を誇っています。もし数本の彼らを見つけたなら、その場所は数年後には黄色の大群で埋め尽くされてしまうほどです。恐ろしい事に、彼らの根には植物の発芽や成長を阻む物質を持っているようです。つまり、他の植物を攻撃して根絶やしにしてしまう恐ろしい力です。その破壊力は、大地の繁栄に必要な動物や昆虫にまで及びます」  茅はその後の言葉を引き継ぐ。 「今抵抗しても、彼らの凄まじい勢いには勝てません。いずれ。彼らの勢いも衰える時が必ず来ます。……驕れる者は久しからず、ですよ。今は、耐えなさい。力を蓄えるのです。その時は来るまでひたすらね」  諭すように言われ、少しずつ感情が落ち着いて来た乱草。 「今、露見草大尉と振袖草中尉が全芒たちに私の指示を伝えに奔走しています。あなたも彼らに合流なさい。そして彼らに伝えなさい。私たち芒だけでなく、全草花に伝えるよう追加を」 「御意!」  乱草は素直に命に従い、茅に丁寧に頭を下げると踵を返した。 「尾花、引き続き研究をお願いしますよ」 「承知しました」  静かに立ち去る彼女の後ろ姿を見送ると、茅はスーッと掻き消えるように姿を消した。
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