第二話 侵略の記録

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 傍らに控えている側近に話しかける。高く澄んだ声の持ち主だ。まるでお日様の光をそのまま髪に宿したような眩い光の色。肩の下まで伸ばされたそれは優雅に巻き毛を作り、豊かに波打っている。頭頂部には己の花で編まれた花冠をかぶっていた。大理石を思わせる純白の肌、優雅な眉も長い睫毛も髪と同じ色だ。ツンと高い鼻は、クレオパトラを彷彿とさせそうだ。零れそうな程大きな瞳は、勝気に目尻がキュッとあがっており、深い(みどり)であった。意外なほどに深い翠色は、賢さと冷静さを現し、ミステリアスな輝きを秘めて煌めいている。背は高く、堂々としておりスリムなモデル体型のようだ。まるでギリシャ神話の女神がまとうようなドレスは派手な濃い黄色だ。己の花色と同じであろう。 (美しい。日輪の光がそのまま髪になったようだ……)  不覚にも、褒め称える感情を持ってしまった自らを恥じる。 「かれこれ二十年ほどになりましょうか?」  側近の一人が答えた。皆、黄色の甲冑を身につけた屈強な男たちだ。茅は腹を括った。そして風に話しかけた。 「そうか。もうすっかり、大地は我が一族の手に渡ったのぅ」  嬉しそうな彼女をしり目に、茅は風に声をかける。
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