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「ありがとうございます。一番だなんて恐縮ですが……嬉しいです」
男性は本当に嬉しそうな顔をして、また笑った。色々な笑顔があるけど、この人の笑顔は、人をも笑顔にする笑顔だ。私はなんだか笑ってしまって、二口目を飲む頃にはコーヒーは少し冷めてしまっていた。それでも、世界一おいしかった。
帰る頃には、日が沈みかけていた。何か特別な話をした訳ではないけど、なかなか私の腰が浮かなかったのだ。離れがたい気持ちになってしまっていた。
男性は、秋山要さんという名前らしい。あの喫茶店の名前は「Aki」。名字から取ってあるのかと聞くと、「息子が、秋が好きだから」と嬉しそうに笑った。他の客は、あの後も来なかった。あまり繁盛していないのだろうか。場所が場所だからなあ……。
そういえば、私はなんのためにここに来たんだっけか。駅までの帰り道を思い出しながら、ここまで来た目的も思い出そうとしたが、思い出せなかった。まあいい。そのうち思い出す。
またあそこに行こう。そう思いながら私は電車に乗り込んだ。
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