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「ええ。好きです、コーヒー」
「そうですか、それは良かった。ではどうぞ、中へ」
男性は花に水をあげ、ジョウロを地面に置き、扉を開けて、手を店の方に開いて私を招いた。
コーヒーを好きだというと、大人は大抵「若いのに関心だ」と言うものだと思っていたが、この人は違うんだな、と思いながら中に入った。
店の前では微かに香っていたコーヒーの香りが、私を襲う様に鼻に入ってきた。店があまり広くないせいか、少し濃い。私は思わず顔を顰めてしまったが、男性は匂いには慣れているためか涼しい顔をしてカウンターの中側へと入っていく。客は、私だけみたいだ。
「少し待っていてくださいね」
カウンターの前にある椅子に向けて手をす、と出して男性はそう言い、準備を始めた。
男性がコーヒーを作る様子を見ていようかと思ったが、近い距離で見るのは気恥ずかしいし、見られる方もやり辛いだろうと思い、店内を眺めてみた。カウンターには器具やらカップやらが置いてあるけど、それ以外にはあまり物は置かれていなかった。絵が飾られていたりとかしてもいいものだけど。だが、不思議と冷たい感じはしないし、壁が木製で落ち着いた色をしているためか、暖かいイメージの方がある。この人の雰囲気にも合っているのかな。この方が、落ち着くかも。
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