第七章 眠る猫、狂う猫 二

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 渋々、布団に座ると、皆、仕事の打ち合わせをしながら寝転んでいた。時間も場所も無いので、合間に話し合っておくしかない。 「兄さん、たまには北京ダックもいいのではないですか?」 「いいかもしれないけど、これだけの人数の分量を焼けないでしょ」  まあ、持ち歩けるように、ニラパイと花巻蒸しパンも作っておこう。他に揚げ団子も作って、皆に持たせておこう。 「エビマヨも好きだけどな……海老が高いよね……」   料理は腕も関係するが、手間を惜しまず料理する事も大切になる。しかし、材料にも左右される。 「まあ、時間があったら、餃子を作りましょうね」  新悟が俺の頬に手を伸ばしてくると、引き寄せてキスしていた。キッチンには扉があり、今は閉まっているので、見られた心配はない。 「……俺は、兄さんの子供だったら、必死で育てますよ。もう全力で父親になります」  だから、高原の息子は誘拐された可能性もあるという。 「でもさ、人形に固執しているということは、本物を手に入れていないということではないの?」 「それも、一理ありますね」  きっと、想定していない何かが起こり、歯車が狂い始めてしまったのだ。 「寝ましょう」  寝ると言っておきながら、新悟は俺の首にキスしていた。 「おやすみ、新悟」  新悟は、俺の服を脱がせていて、胸から腹まで舐めていた。新悟の舌は明海に似ていて、サラサラとしていて、気持ちがいい。 「サラサラ?」  こんなに乾いた舌があるのかと横を見ると、明海が俺を舐めていた。 『全く……世話のかかる奴だな……内臓も修復しておいてやるよ』  明海は、俺が新悟に抱かれた事に気付いていた。 『菩薩はな、迷う者が、欲しくて欲しくて渇望してしまう何かを持っている……俺には光に見えるが、新悟には兄、他の人には温もりと形を変えて存在するから厄介だよ……』  明海が舐めていてくれるが、新悟は何をしているのだろうかと、横目で新悟を見ると爆睡していた。 「おやすみ、新悟」  新悟も疲れているのだろう。
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